将来の認知症予防や脳の健康維持において、日々の食事はとても重要です。
脳の機能を健康な状態で維持し、いつまでも活発に保つ「脳を守る食事」の実践ポイントをわかりやすく解説していきたいと思います。
脳を守る食事の「2つのテーマ」
脳を守る食事には、アプローチの異なる2つの大きなテーマがあります。
【テーマ1】 脳にゴミをためない(蓄積防止・除去)
認知症の発症前にたまり始める「アミロイドβ」を除去する効果が医学的に証明された成分を積極的に摂取し、ゴミがたまりにくい脳をつくる。
【テーマ2】 脳の機能を健康な状態で維持する(脂質補給・血管強化)
脳の主成分である「良質な脂質」を摂ることで、脳を元気にし血管を守る。
・効果1:脳の神経細胞のやり取りが活発になる
・効果2:血管が強くしなやかになる
食品摂取の多様性スコア(DVS)と認知機能の関係
東京都健康長寿医療センター研究所が開発した「食品摂取の多様性評価(DVS)」は、10の食品群を1週間にどれだけ食べたかで食のバランスを評価する指標です。
10の食品群「さあにぎやかいただく」
- さ:魚介類
- あ:油・油脂類
- に:肉・肉類
- ぎ:牛乳・乳製品
- や:緑黄色野菜
- い:いも・いも類
- た:たまご・卵類
- だ:大豆・大豆製品
- か:海藻・海藻類
- こ(く):果物(くだもの)
食の多様性と認知機能低下リスク
調査によると、食品摂取の多様性が最も高いグループは、最も低いグループと比較して認知機能低下のリスクが44%低いことが報告されています。
| グループ(多様性レベル) | 認知機能低下リスク指標 |
| 最も低いグループ | 1(基準) |
| やや低いグループ | 0.99 |
| やや高いグループ | 0.68 |
| 最も高いグループ | 0.56(リスク44%減) |
食事の偏りを防ぐポイント
高齢になると買い物や調理が億劫になり、1人での食事(孤食)が増えることで食への関心が薄れ、食生活が単調になりがちです。
食の偏りを防ぐには、宅配サービスや出来合いのお惣菜を活用するのも有効な手段となります。
【事例比較】1日の食事メニュー例
✕ 食の多様性が最も低いグループの例
- 朝食:メロンパン、アイスコーヒー
- 昼食:カレーライス(レトルト)、緑茶
- 夕食:焼きそば、ビール
◯ 食の多様性が最も高いグループの例
- 朝食:玄米、みそ汁(えのき、豆腐など)、煮物(かぼちゃ、大根など)、サラダ、りんご、みかん
- 昼食:混ぜご飯、吸い物(わかめなど)、鮭の煮つけ、酢の物(じゃがいも、大豆など)、カフェオレ、緑茶
- 夕食:オレンジ、和菓子(和菓子)、玄米入りオムライス、吸い物(たけのこなど)、ちくわ入りサラダ、冷奴、緑茶
理想的な栄養バランス「一汁三菜」と和食の効果

認知症予防の観点から推奨される基本の食事スタイルは、「一汁三菜」をベースとした和食です。
一汁三菜の基本構成
主食(ごはん)に汁物、おかず3品(主菜1品、副菜2品)で構成します。
| 要素 | 内容・役割 | 実践ポイント |
| 主食 | ごはん(炭水化物など) | 白米だけでなく、玄米や雑穀米も取り入れる。 |
| 主菜 | メインのおかず(魚、肉、卵、大豆製品など) | たんぱく質の補給。魚の主菜を多めにするのがおすすめ。 |
| 副菜 | サブのおかず(2品) | 主食・主菜で不足しがちなビタミン、ミネラル、食物繊維を補う。主菜と食材や調理法を変える。 |
| 汁物 | みそ汁、お吸い物など | 塩分が多いみそ汁は1日1〜2杯が適量。野菜、海藻類、きのこ類を入れて具だくさんにする。 |
和食がもたらす認知症予防効果
東北大学の研究グループが約1万4000人の高齢者を対象に行った調査によると、和食をよく食べる高齢者は、あまり食べない人と比べて認知症の発症リスクが20%低いことが分かっています。
認知症予防に効果的な「4つの食事スタイル」

認知症予防において特に推奨されている代表的な食事スタイルは以下の4つです。
- 和食
「一汁三菜(主食・汁物・主菜1品・副菜2品)」を基本とする日本の伝統的食事スタイル。 - 地中海食
地中海沿岸の伝統食。野菜・果物・魚・豆腐・ナッツ類・オリーブオイルなどを豊富に使う。 - DASH食(ダッシュしょく)
高血圧予防・改善を目的とした食事療法。ミネラルを摂り、塩分の排出を促す。 - マインド食
地中海食とDASH食を組み合わせた、より実践しやすい認知症予防特化型の食事スタイル。
WHO推奨の認知症予防食「地中海食」
イタリアやスペインなど地中海沿岸で親しまれてきた地中海食は、WHO(世界保健機関)も認知症予防に推奨しています。
科学的に証明された予防効果
アメリカ・コロンビア大学の研究によると、地中海食を多く摂る人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが大きく下がることが証明されています。
さらに、「地中海食ピラミッド」の実践に「高い運動量」を組み合わせることで、リスク低下の効果が最も顕著になります。
地中海食ピラミッド(摂取頻度の基準)
※ピラミッドの上に向かうほど、食べる頻度を減らす食品となります。
- 毎日摂る
野菜、いも類、パスタ、米、全粒パン、果物、豆類・ナッツ類、オリーブオイル、チーズ、ヨーグルト / 水(1日グラス6杯) / 適度な運動 - 週に数回
魚、鶏肉、卵、お菓子 - 月に数回・少量
牛肉、豚肉 - 適量
ワイン(1日グラス1〜2杯)
高血圧を改善して脳を守る「DASH食」
DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、1990年代にアメリカの国立心肺血液研究所などが提案した「高血圧を防ぐ食事療法」です。
高血圧と脳血管性認知症のリスク
中年期に高血圧である場合、正常な人と比べて将来脳血管性認知症になるリスクが大幅に高まります。
- 中年期(50〜64歳)の高血圧:発症リスク 約10倍
- 老年前期(65歳以上)の高血圧:発症リスク 約6倍
DASH食のルール(栄養素の選び方)
【積極的に摂りたい栄養素】
- カリウム:体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として排出する(例:ブロッコリーなど)。
- カルシウム:不足すると高血圧を招くため十分に補給する。
- マグネシウム:血管を拡張させて血圧を下げる(例:ほうれん草など)。
- 食物繊維:余分なナトリウムを吸着して体外へ排出する。
- たんぱく質:血管を強く・丈夫にする。
【控えたい栄養素】
- 飽和脂肪酸
動脈硬化を進行させ、血圧上昇につながる(例:バターなど)。 - コレステロール
血管にたまることで血管が狭くなり、高血圧の原因となる(例:赤身肉など)。
アルツハイマー型認知症リスクが半減する「マインド食」
マインド食は、地中海食とDASH食を組み合わせて2015年にアメリカのラッシュ大学医療センターが発表した、アルツハイマー型認知症予防に特化した食事スタイルです。
15項目による摂取ルール
| 分類 | 食材・項目 | 推奨される摂取頻度・ルール |
| 積極的に摂る(10項目) | 緑黄色野菜 | 週6回以上 |
| その他の野菜 | 1日1回以上 | |
| ナッツ類 | 週5回以上 | |
| ベリー類 | 週2回以上 | |
| 豆類 | 週3回以上 | |
| 全粒穀物 | 1日3回以上 | |
| 魚 | なるべく多く(優先的に摂取) | |
| 鶏肉 | 週2回以上 | |
| オリーブオイル | 優先的に使用 | |
| ワイン | 1日グラス1杯 | |
| 避けるべき(5項目) | バター | なるべく少なく |
| チーズ | 週1回以下 | |
| 赤身の肉 | 週4回以下 | |
| ファストフード | 週1回以下 | |
| お菓子・菓子パン・スイーツ | 週5回以下 |
実践度合いと認知症発症率の違い
高齢者約900人を対象にした約5年間の追跡調査では、実践の厳密さによって明確な差が出ることが判明しています。
- 少し実行(平均5.6項目):基準(1.0)
- 緩やかに実行(平均7.5項目):発症リスク 35%低下(0.65)
- 厳密に実行(平均9.6項目):発症リスク 53%低下(0.47)
手軽に始められるポイント
マインド食は完璧を目指す必要はありません。15項目中7〜8項目をクリアする「緩やかな実行」であっても十分な効果(リスク35%低下)が得られるので、無理なく継続しやすいのが大きな特徴です。

