【誤解だらけの糖質論】「ご飯=角砂糖14個分」がウソである理由とは? 糖質の種類を知って健康的な食生活を

金平糖 健康

「ご飯は太る」「ご飯1杯は角砂糖14個分に相当する」といった言葉を、テレビや雑誌、インターネットで一度は目にしたことがあるかもしれません。
炭水化物抜きダイエットや糖質制限がブームになる中で、ご飯を「悪者」だと考える風潮が広まりました。

しかし、これは健康的な食生活を送る上で、非常に大きな誤解です。
ご飯と角砂糖は、たとえ同じ量の糖質を含んでいても、その種類が全く異なります。

そして、この「種類の違い」こそが、私たちの体に与える影響を大きく左右します。

この記事では、なぜ「ご飯=角砂糖」という説が誤りなのかを科学的に解説し、賢く糖質と付き合うための知識をご紹介します。


「ご飯=角砂糖14個分」は“量”だけの比較に過ぎない

まず、「ご飯1杯=角砂糖14個分」という数字の根拠から見ていきましょう。

文部科学省が公表している「日本食品標準成分表(2020年版)」によると、茶碗一杯分のご飯(約150g)に含まれる炭水化物は約57gです。

一方、一般的に市販されている角砂糖1個の重さは約4g。単純に計算すると、57g ÷ 4g ≒ 14個となり、含まれる糖質の「量」だけで比較すれば、この計算は間違いではありません。

しかし、この比較は糖質の性質や種類を一切無視しています。
栄養学的に見ると、この比較はリンゴとミカンを「同じ丸い果物」として一緒くたにするようなものであり、本質的な違いを見過ごしています。


糖質の種類がもたらす身体の違い|多糖類 vs 二糖類

一言で「糖質」といっても、その構造によっていくつかの種類に分けられます。
それぞれの糖質は、体内で吸収されるスピードや消化プロセスが全く異なります。

  • 単糖類(ブドウ糖、果糖など)
    これ以上分解されない最小単位の糖です。
    体内に最も速く吸収されます。
  • 二糖類(砂糖など)
    糖類が2つ結合したものです。
    消化酵素によって比較的速やかに分解され、吸収されます。
  • 多糖類(でんぷんなど)
    単糖類が多数結合したもので、非常に複雑な構造をしています。
    消化・吸収には多くの時間とエネルギーを必要とします。

ご飯の主成分は「多糖類」である「でんぷん」です。
ご飯を食べると、体内でこの複雑なでんぷんを一つ一つのブドウ糖に分解する作業が行われます。
この過程に時間がかかるため、ブドウ糖がゆっくりと血液中に放出され、血糖値の上昇も緩やかになります。
これは、長時間の活動に必要なエネルギーを安定的に供給するのに適しています。

一方、角砂糖の主成分は「二糖類」である「ショ糖」です。
ショ糖は、ブドウ糖と果糖が結合したもので、体内で素早く分解されます。
そのため、血糖値が急激に上昇し、インスリンというホルモンが大量に分泌されます。


血糖値の「急上昇」が引き起こすリスク

血糖値の急激な上昇は、体にさまざまな影響を及ぼします。

  • 脂肪の蓄積
    血糖値が急上昇すると、大量に分泌されたインスリンが、余分な糖を「中性脂肪」として体内に蓄える働きを促進します。
    特に、角砂糖に含まれる果糖は、ブドウ糖よりも肝臓で中性脂肪に合成されやすいことがわかっています。
  • インスリン抵抗性
    血糖値の急上昇とインスリンの大量分泌が頻繁に繰り返されると、体の細胞がインスリンに対して鈍感になり、血糖値が下がりにくくなります。
    これは「インスリン抵抗性」と呼ばれ、将来的に2型糖尿病や生活習慣病のリスクを高めると言われています。

ご飯のように血糖値が緩やかに上昇する食品は、インスリンの過剰分泌を抑え、脂肪を蓄えにくい体質づくりにつながります。

また、でんぷんの消化にはエネルギーを消費するため、ご飯を食べる行為自体が代謝を促すことにもなります。


「ご飯=角砂糖」は、なぜ意図的に広められたのか?

このように、科学的に見ても全く異なる性質を持つご飯と角砂糖が、なぜ「同じもの」として扱われたのでしょうか。

それは、多くの人が「角砂糖=体に悪い」「太りやすい」というイメージを持っていることを利用し、ご飯を悪者として印象づけたいという意図があった可能性が高いと考えられます。
特に、特定のダイエット法や健康食品を売り込む際に、既存の食文化を否定する論調が用いられることは珍しくありません。

大切なのは、特定の情報に鵜呑みにせず、「糖質は種類が重要」という本質を理解することです。


賢く糖質と付き合うためのヒント

糖質は、私たちの身体を動かすためのガソリンのようなものです。
完全に断つのではなく、その種類を選んで賢く摂取することが、健康的な身体を維持するための鍵となります。

  • 主食はご飯や玄米、全粒粉パンを選ぶ
    ご飯などの複雑な糖質は、血糖値の急上昇を抑え、持続的なエネルギー源となります。
    食物繊維も豊富なので、腸内環境を整える効果も期待できます。
  • お菓子や清涼飲料水は控えめに
    ケーキ、ジュース、清涼飲料水などに含まれる単純な糖質は、血糖値を急上昇させやすいため、なるべく摂取を控えるのが理想的です。
  • 食事のバランスを意識する
    糖質だけでなく、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、すべての栄養素をバランス良く摂ることが大切です。

「糖質の量」だけにとらわれるのではなく、その「種類」に目を向けることで、より健康的で充実した食生活を送ることができます。
正しい知識を持って、情報に惑わされないようにしましょう。

この記事の監修者・執筆者
パーソナルトレーナー
和泉 大樹(イズミ ダイキ)

2012年から横浜市を中心に個人で訪問型の出張パーソナルトレーナーとして活動しています。トレーニングだけでなく、ストレッチに整体、食事や生活習慣のアドバイスもしています。

~保有資格~
・NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定 パーソナルフィットネストレーナー)
・JATI-ATI (日本トレーニング指導者協会認定 トレーニング指導者)
・スポーツプログラマー(日本スポーツ協会認定)
・ACCA公認 アスレティックコンディショニングコーチ アドバンス
・YMCメディカルトレーナーズスクール 整体療術科 卒業
・健康管理士上級指導員(日本成人病予防協会認定)
・ヘルスケアアドバイザー(日本チェーンドラッグストア協会認定)
etc.

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