健康のためにせっかく新鮮な野菜を選んでも、その調理法や食べ方を間違えると、含まれているはずの貴重な栄養素の多くを無駄に捨ててしまっている可能性があります。
特に、野菜の皮やワタ、タネといった普段捨ててしまいがちな部分、さらには加熱や水にさらすといった調理過程には、栄養素を大きく損失させてしまいます。
この記事では、栄養素を無駄にしてしまう代表的な「ダメな食べ方」を解説し、野菜本来の力を最大限に引き出すための具体的な調理・摂取のコツをご紹介していきたいと思います。
「皮むき」はNG!皮・ワタ・タネに潜む驚異の栄養価
多くの人が調理の際に捨ててしまう「皮」「ワタ」「タネ」こそ、実は野菜が持つ豊富な栄養素の宝庫と言えます。
(1) 皮の近くに集中する抗酸化パワー
カボチャやニンジンなどの皮の近くには、免疫機能を高め、皮膚や粘膜を強化するほか、がんや心臓病、動脈硬化の予防効果が期待されるβ-カロテンが豊富に含まれています。
また、トマトの皮には、β-カロテンの約2倍もの強力な抗酸化作用を持つリコピンが多く含まれています。
その他にも、多くの野菜の皮にはポリフェノールがぎっしり詰まっています。
栄養を逃さず、抗酸化力をしっかり摂取するためにも、野菜は可能な限り皮も一緒に食べるように工夫すると良いです。(※無農薬や低農薬の野菜を選び、しっかり洗うことが前提です。)
(2) 捨ててしまいがちなワタ・タネの機能性成分
普段ゴミ箱行きになりがちな「ワタ」や「タネ」にも、見逃せない健康成分が含まれています。
- ピーマンのワタとタネ
血栓を予防するとされる成分ピラジンが、皮の約10倍も含まれています。
種ごと調理して無駄なく摂取しましょう。 - カボチャのタネ
女性ホルモンを整えるリグナン(ポリフェノールの一種)に加え、健康的な脂質であるオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸などの不飽和脂肪酸が豊富です。 - ゴーヤのワタ
脂肪燃焼効果や中性脂肪を抑える効果が期待できる共役リノール酸が含まれています。
苦味はワタに集中していないため、ぜひ一緒に調理してみてください。
熱に弱い酵素や水溶性ビタミンを失う調理法に注意
加熱方法や水さらしも、栄養素の損失に大きく関わってきます。
(1) 48℃以上の加熱で酵素が不活性化
野菜には、消化を助けたりする酵素が豊富に含まれています。
しかし、酵素は熱に弱く、48℃以上に加熱されるとその活性を失ってしまう性質があります。
※酵素を口から摂取しても消化されてしまうので、酵素を摂ることが良いわけではありません。
大根には、消化を助けるジアスターゼ、カタラーゼ、オキシダーゼなどの酵素が多く含まれていますので、酵素の恩恵を受けるためには、大根おろしのように生で食べるのが最適です。
(2) 茹でる・水にさらすと水溶性ビタミンは流失
ホウレン草や小松菜などの緑黄色野菜に豊富なビタミンCは、水に溶けやすい水溶性ビタミンです。
そのため、たっぷりの熱湯で茹でたり、長時間水にさらしたりすると、大量に水分中に流れ出てしまいます。
- 茹でる代わりに
ビタミンCの流失を抑えるためには、少量の水で蒸し煮にするか、ラップに包んで600Wの電子レンジで数十秒加熱するレンチン調理が効果的です。 - 生食もおすすめ
ブロッコリーやカリフラワーは、加熱すると栄養素を失いやすいため、海外ではサラダなどで生食されることもあります。
抵抗がなければ、そのまま生で食べることで栄養素を効率よく摂取できます。 - 葉野菜の調理
葉野菜は切った後すぐに調理・摂取することで、水に触れる時間を短縮でき、みずみずしさと栄養を両立できます。 - 玉ねぎの辛み成分
血液サラサラ効果の高い硫化アリルも水溶性です。
辛みを抑えるために水にさらすよりも、カツオ節などを加えて風味を楽しむ工夫をすると、栄養素の損失を防げます。
組み合わせによっては栄養素を「破壊」してしまう
特定の食材を組み合わせることで、一方の栄養素が他方の栄養素を壊してしまう現象が起こることがあります。
- ニンジン
ニンジンに含まれるアスコルビナーゼという酵素は、ビタミンCを酸化・破壊してしまいます。
そのため、野菜サラダや野菜ジュースにニンジンを加えると、他の野菜に含まれる貴重なビタミンCを壊してしまう可能性があります。 - 対策
アスコルビナーゼは熱と酸に弱い性質があります。
ニンジンを加熱するか、酢やレモンなどの酸が含まれたドレッシングをかけることで、この酵素の働きを抑えることができます。
まとめ|栄養を逃さない「丸ごと・短時間調理」のポイント
せっかくの食材の栄養を最大限に活かすためには、以下のポイントを意識して調理・食事に取り組んでみましょう。
- 皮ごと、丸ごと食べる
豊富な栄養素が詰まった皮、ワタ、タネを極力捨てずに活用する。 - 生食を使い分ける
酵素や熱に弱い栄養素(ビタミンCなど)を摂取したい場合は、生で食べるか、低温調理を選択する。 - 加熱方法の工夫
茹でるよりも、蒸す、レンチン、炒めるなど、水に触れる時間を短くしたり、調理時間を短縮したりする工夫で水溶性ビタミンの流失を防ぐ。 - 食べ合わせに注意
ニンジンなど、栄養素を壊す酵素を含む食材と、ビタミンCを多く含む食材を一緒に摂る場合は、酸や加熱で対策を講じる。

