「ストレスで体調が優れない」「過去のトラウマが忘れられない」といった悩みに対し、心理学の側面から身体のアプローチを行う「生理心理学」が注目されています。
心と身体は密接に関連していますが、自分自身の状態を客観的に把握するのは難しいものです。
この記事では、生理心理学に基づいたメンタルケアの代表的な手法である「バイオフィードバック」「自律訓練法」、そしてPTSD治療に有効な「EMDR」について解説します。
1. バイオフィードバック:身体の声を可視化して整える
自分の心拍数や脳波をリアルタイムで把握できたら、メンタルコントロールはもっと容易になります。
それを可能にするのがバイオフィードバック(Biofeedback)です。
仕組みと特徴
バイオフィードバックは、精密機器を用いて、普段は自覚できない心拍、血圧、筋肉の緊張、脳波などの生理現象をモニターに映し出し、本人に提示(フィードバック)する手法です。
- 脳波のコントロール
脳波を可視化し、リラックス状態を示す「α波(アルファ波)」が出るよう意識的に訓練します。 - セルフケアの向上
自分の生理状態を客観的に見ることで、心身を自分でコントロールする感覚(自己調整能力)を養います。
これにより、ストレスへの耐性を高め、自分自身でリラックス状態を作り出せるようになります。
2. 自律訓練法:自己暗示でリラックス状態を導く
心理療法の現場で広く活用されているリラクゼーション技法に「自律訓練法」があります。
これは、心身の緊張を解きほぐし、自律神経のバランスを整えるための訓練です。
実践の手順と「背景公式」
静かな環境で目を閉じ、自分自身に言語的な暗示(公式)をかけることで、副交感神経を優位に導きます。
- 背景公式
「気持ちが落ち着いている」 - 第1公式〜第6公式
「手足が重たい」「手足が温かい」「心臓が静かに打っている」など、段階的に進めます。
注意点と禁忌
自律訓練法は強力な自己コントロール法であるため、以下の点に注意が必要です。
- 専門家の指導
自己流ではなく、まずは公認心理師などの専門家から指導を受けることが推奨されます。 - 疾患による制限
心臓疾患や糖尿病などの持病がある場合、症状に影響を与える可能性があるため、実施できない(禁忌)場合があります。
必ず主治医に相談しましょう。
3. EMDR:トラウマを科学的に処理する最先端の心理療法
大きな災害、犯罪、事故などの経験が原因で起こるPTSD(心的外傷後ストレス障害)。
この治療において、世界的に高い効果が実証されているのがEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)です。
なぜ「眼球運動」が効くのか?
通常、人間の脳はネガティブな体験も時間の経過とともに整理・適応する力を持っています。
しかし、強烈なストレスによってその機能が阻害されると、記憶が「凍結」されたような状態になり、フラッシュバックを引き起こします。
EMDRでは、あえてトラウマを思い出しながら、カウンセラーの指の動きに合わせて左右に眼球運動を行います。
- 脳の再処理を促進
生理反応を利用した眼球運動が、脳の記憶処理を活性化させます。 - ネガティブからポジティブへ
過去の記憶に伴う苦痛を和らげ、客観的な捉え方へと変化させます。
科学的根拠に基づいたアプローチ
EMDRは、生理心理学、認知心理学、学習心理学など、多くの学術領域が融合した科学的な療法です。
非常に高度な技術を要するため、正式なトレーニングを受けた専門家のみが実施を許されています。
まとめ:自分に合ったメンタルケアを選ぶために
心の問題を「気合」や「性格」のせいにせず、生理的なメカニズムからアプローチすることで、回復の道は大きく開けます。
- 日々のリラックスを目指すならバイオフィードバックや自律訓練法
- 深い心の傷やPTSDにはEMDR
これらはすべて、心と身体の繋がりを利用した「科学的なセルフケア・治療法」です。
もし一人で抱えきれないストレスを感じているなら、これらの手法を取り入れているカウンセリングルームや医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
