病気じゃない!普通の人が「罪悪感なし」で嘘をつくメカニズム
誰もが一度は「あの人はどうしてそんなに平気で嘘をつけるのだろう?」と感じたことがあるのではないでしょうか。
しかし、その嘘は、病的なものではなく、ごく普通の人が日常的についている可能性があります。
人は、自分の掲げる目標や最も大切にする価値観を優先する時、「正直であること」よりも「目標達成や価値観の維持」を優先しやすい性質を持っています。
これが、「何の罪悪感も持たずに嘘をつく」という行為の根底にあるメカニズムです。
本記事では、ドイツの心理学者エドゥアルト・シュプランガーが提唱した「6つの性格分類」に基づき、人が何を大切にするかによって、どのような嘘をつきやすいのか、そして、なぜそこに罪悪感が伴わないのかを深掘りします。
自分の嘘、そして周りの人の嘘の理由が、自分の核となる価値観から見えてくるかもしれません。
シュプランガーの「6つの性格分類」とは?何を大切にするかで行動が変わる
シュプランガーは、人間がどのような「価値(何を最も大切にしているか)」に動機づけられているかによって、人の性格を以下の6つのタイプに分類しました。
| 性格分類 | 最も価値を置くもの(行動原理) | 嘘との関係性(目的) |
| 1. 理論志向型 | 知識、真実、合理性 | 真実の追求を優先するため、嘘を嫌う傾向にある。 |
| 2. 経済志向型 | 財産の獲得、実用性、利益 | 利益の獲得のためなら、嘘をつくことをためらわない。 |
| 3. 審美志向型 | 美しさ、調和、感覚的な体験 | 美の保護・追求のためなら、平気で嘘をつく。 |
| 4. 宗教志向型 | 無垢、絶対的な価値観、信仰 | 自分の価値観への共感を得るために嘘をつく。 |
| 5. 権力志向型 | 権力の獲得、他人への支配、影響力 | 権力の獲得・維持の手段として、他者を利用し嘘をつく。 |
| 6. 社会志向型 | 他人・社会の福祉、献身、愛 | 社会や他者の利益のためなら「嘘も方便」と割り切る。 |
【タイプ別解説】価値観が暴く「罪悪感なき嘘」の理由
それぞれのタイプが、どのような価値を守るために嘘をつくのか、具体的な傾向を見ていきましょう。
1. 理論志向型:知識に価値を見出す「真実の探求者」
- 特徴
理論的かつ合理的であることに価値を置き、知識や真実の探求を最も大切にします。 - 嘘の傾向
嘘は非合理的・非論理的であるため、嘘を嫌う傾向にあります。
反対に、正直すぎて感情的な温かみに欠けると受け取られることがあります。 - 罪悪感なき理由
「真実」こそが至高の価値観であり、それを捻じ曲げる行為は自分自身との矛盾を生むため、基本的に嘘の必要性を感じません。
2. 経済志向型:財産の獲得に重きを置く「実利主義者」
- 特徴
物事の価値や人物価値を、お金や財産があるかないかで判断することが多く、実用性を重視します。 - 嘘の傾向
利益を得るため、損を避けるためであれば、嘘をつくことをためらいません。 - 罪悪感なき理由
行動の基準は「利益(コストパフォーマンス)」です。
嘘によって最終的な利益が得られるのであれば、それは合理的な手段であると割り切るため、罪悪感は生じにくいです。
3. 審美志向型:美しさなどの感覚的なことに価値を見出す「芸術家」
- 特徴
美しさや調和といった感覚的な体験に価値を見出し、実生活や現実的な物への関心は低い傾向があります。 - 嘘の傾向
「美しい物・調和の取れた世界を守るため」、「美しさを追求するため」であれば、平気で嘘をつきます。 - 罪悪感なき理由
「美」が最も大切です。
美の世界を乱す醜い現実を隠蔽したり、より美しく見せるための創作(嘘)は、価値観に沿った行動であり、罪悪感は薄れます。
4. 宗教志向型:絶対的な価値観を追求する「信仰者」
- 特徴
無垢であることが善であり、快楽の追求は悪と考えるなど、絶対的な価値観を持ち、他人にもそれを共有してもらおうとします。 - 嘘の傾向
自分の絶対的な考えに共感してもらうため、自分の価値観を押し付けるために嘘をつくことがあります。 - 罪悪感なき理由
「絶対的な真理・信仰」の維持が最優先です。その真理に他者を導くため(=共感を得るため)の嘘は、「善なる目的」ための手段と見なされ、正当化されます。
5. 権力志向型:他人を支配し影響力を持つ「支配者」
- 特徴
権力を得ることや他人を支配することに大きな喜びを感じ、影響力を拡大しようとします。 - 嘘の傾向
権力を獲得・維持するための手段として嘘をつき、場合によっては他人を利用することに躊躇がありません。 - 罪悪感なき理由
「権力」の獲得・維持が最大の価値であり、嘘はそれを達成するための単なる戦略です。
目標達成こそが最重要であるため、道徳的な感情が入り込む余地が少ないです。
6. 社会志向型:他人や社会の福祉に価値を置く「奉仕者」
- 特徴
他人や社会の福祉、愛、献身に価値を置き、困っている人を助けることに喜びを見出します。 - 嘘の傾向
「社会に役立つこと」や「困っている人・苦しんでいる人を助けるため」であれば、「嘘も方便」**と割り切って嘘をつきます。 - 罪悪感なき理由
「愛や他者の幸福」が行動原理です。
結果として相手を助け、社会に貢献できるのであれば、嘘という手段は許容されます。
📌 まとめ:嘘は「価値観を守るための手段」に過ぎない
このように、人がつく「罪悪感のない嘘」の裏には、その人が何よりも大切にしている価値観が隠れています。
嘘をつくことは、その人にとって「価値観を守るための、合理的または必要な手段」に過ぎないと言えます。
自分はどのタイプに当てはまりましたか?
この分類を理解することで、自己理解を深めるだけでなく、他人の行動や人間関係のあり方を理解するためのヒントが得られるかもしれません。

