食材に含まれる栄養素は、調理方法によって吸収率や残存量が大きく変わります。
「生で摂るべき栄養素」と「加熱で吸収率が上がる栄養素」の特性を知り、日々の食卓で効率よく栄養を摂取しましょう。
1. 【野菜編】熱に弱いビタミン vs 加熱で吸収UPの脂溶性ビタミン
野菜には、熱に弱い水溶性ビタミンが多い一方で、加熱や油によって吸収が高まる脂溶性ビタミンもあります。
目的の栄養素に合わせて調理法を選びましょう。
生食・軽い加熱がおすすめの野菜:水溶性・酵素を守る
| 野菜 | 含まれる主要な栄養素 | ベストな調理法と理由 | 栄養を逃さないコツ |
| キャベツ | ビタミンU(キャベジン)、ビタミンC | 生食(サラダ) ビタミンUとビタミンCは熱に非常に弱く水溶性のため、加熱すると大幅に失われます。 | 加熱する場合は、炒め物などで短時間に済ませましょう。 |
| 大根 | 消化酵素(ジアスターゼ) | すりおろし(生食) 消化酵素は熱に弱く、活性を期待するなら生食が必須です。 すりおろすことで酵素の量も増えます。 | 酵素やカリウムが溶け出した水分も捨てずに摂りましょう。 |
| 玉ねぎ | アリシン | 生食(スライス) アリシンは水に溶けやすく、熱にも弱いため、生で食べるのが最も効率的です。 | 水にさらす時間は短くし、加熱する場合は炒め物など加熱し過ぎない調理法を選びましょう。 |
温める調理法がおすすめの野菜:細胞壁を壊し、吸収率を高める
| 野菜 | 含まれる主要な栄養素 | ベストな調理法と理由 | 栄養を逃さないコツ |
| カボチャ | βカロテン、ビタミンA・E | 油を使った加熱調理(煮物・炒め物) カボチャのデンプンが熱に弱いビタミンCを守り、また、ビタミンA・E・βカロテンは脂溶性のため油と一緒に摂ると吸収率が高まります。 | 皮ごと調理することで、皮近くの栄養素も逃しません。 |
| トマト | リコピン | 加熱調理+油(トマトソース、炒め物) リコピンは、熱を加えることで細胞壁が壊れ、吸収率が大幅に向上します。 さらに油と一緒で吸収が良くなります。 | オリーブオイルなどで炒めてから煮込むのが理想的です。 |
| ニンジン | βカロテン | 油を使った加熱調理(炒め物、きんぴら) βカロテンは脂溶性ビタミンのため、油との相性が抜群です。 | 皮の近くに栄養が豊富なので、皮はむかずに調理しましょう。 |
| 生姜 | ショウガオール | 加熱調理(スープ、煮物) 身体を温める成分ショウガオールは、生のショウガに含まれるジンゲロールが加熱によって変化・増加します。 | 皮の近くに多く含まれるため、皮ごと調理しましょう。 |
2. 【肉類編】安全な加熱と栄養素の「溶け出し」対策
肉類は食中毒防止のため、基本的に中心部までしっかりと加熱することが大前提です。
その上で、熱に弱いビタミンB群や水溶性の栄養素をどう逃さないかがポイントです。
| 肉の種類 | 含まれる主要な栄養素 | ベストな調理法と理由 | 栄養を逃さないコツ |
| ラム肉 | L-カルニチン、鉄、亜鉛 | 焼き調理 鉄や亜鉛は水に溶け出す性質があるため、煮込みよりも焼き調理が適しています。 L-カルニチンも熱による損失は少ないです。 | 焦げ付くほどの過熱はビタミンB1の損失に繋がるため避けましょう。 |
| 手羽先 | コラーゲン、ビタミンB2 | スープ、煮込み:煮込むことでコラーゲンや水溶性のビタミンB2が煮汁に溶け出します。 | 煮汁(スープ)ごと全て摂ることで、溶け出した栄養素を無駄なく回収できます。 |
| ささみ | ビタミンB群 | 蒸し調理 ビタミンB群は水溶性で水に溶け出しやすいです。 蒸し調理は水に触れないため、損失が少なく、パサつきも抑えられます。 | 茹でる場合は、茹で汁も活用しましょう。 |
| 牛ひれ | ビタミンB1 | 余熱調理(アルミホイル包みなど) ビタミンB1は熱に弱いため、表面をさっと焼き、アルミホイルに包んで余熱で火を通すと損失を最小限に抑えられます。 |
3. 【魚介類編】酸化しやすいオメガ3 vs 煮汁を活用するミネラル
魚介類の最大の魅力であるオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は、酸化しやすく熱にも弱いです。
一方、骨や貝に含まれるミネラルは煮汁に溶け出す特性があります。
| 魚介の種類 | 含まれる主要な栄養素 | ベストな調理法と理由 | 栄養を逃さないコツ |
| 青魚(アジ、サバなど) | オメガ3脂肪酸(DHA・EPA) | 生食(刺身) オメガ3脂肪酸は酸化しやすく熱に弱いため、加熱しない生の状態が最も効率よく摂取できます。 | 酸化を防ぐため、柵(ブロック)で購入し、食べる直前に切るのがおすすめです。 |
| イワシ | カルシウム、ビタミンB6 | 薄味の煮付け 薄味でじっくり煮込むことで、骨まで柔らかくなり、豊富なカルシウムをまるごと摂取できます。 煮汁からはビタミンB6も摂れます。 | 煮汁を捨てずに、魚と一緒に最後までいただきましょう。 |
| あさり | 亜鉛、鉄 | 汁物(味噌汁、クラムチャウダー) 亜鉛や鉄は水に溶け出しやすいため、煮汁も一緒に摂れる汁物調理が最適です。 | 加熱し過ぎると身が硬くなるため、調理時間は短めに。 |
| さくらえび | カルシウム、ビタミンE | 揚げ調理(かき揚げ) ビタミンEは脂溶性のため、油と一緒に摂ることで吸収率が向上します。 カルシウムも豊富で、丸ごと食べられます。 |
まとめ|栄養を活かすための基本の考え方
| 栄養素の性質 | 基本の調理方針 | 具体的な調理法例 |
| 熱に弱い/酵素 | 加熱せず生で摂る | サラダ、刺身、すりおろし |
| 脂溶性 | 油と一緒に加熱する | 炒め物、揚げ物、油を使ったソース |
| 水溶性/ミネラル | 煮汁を捨てずに摂る | スープ、煮込み料理、蒸し調理 |

