なぜデマ(フェイクニュース)は発生し、広がるのか?不安と情報心理のメカニズム

地震や感染症の流行といった非常事態下では、不確実性や不安感の高まりにより、デマ(虚偽の情報や噂話)が発生し、瞬く間に拡散する傾向があります。
現代ではインターネットやSNSの普及により、そのスピードは加速し、時には社会全体を巻き込む集団パニックを引き起こす原因ともなります。

なぜ人はデマに夢中になり、広めてしまうのか。その発生と拡散のメカニズムを、心理学の観点から解説します。

デマが発生し、広がるための三つの条件

デマや噂話が生まれ、社会に浸透していくためには、主に以下の三つの条件が揃っている必要があります。
特に、生命や生活への影響が大きい災害時や感染症流行時に顕著に見られます。

条件定義心理的な状態
1. 重要性(重要度の高さ)生命や財産、健康など、自分や社会の存続に関わる切実な情報であること。「少しでも役に立つ情報」を求める切迫感。
2. あいまいさ(情報の不確実性)状況に関する正確な情報が不足しており、全体像がよくわかっていない状態。不安を解消するための「何か」を求める心理。
3. 不安(感情の増幅)社会全体、または個人レベルで不安感が高まっていること。不安が高まるほど、不確実な情報でも頼りにしてしまいやすい状態。

心理学では、これらの条件が揃うとき、人は不正確な情報でも「何もないよりはマシ」と考え、受け入れやすくなるとされています。


デマを「拡散」させる四つの心理的欲求

人はなぜ、正確ではないかもしれない情報を知ったとき、それをさらに広めようとするのでしょうか。
この拡散行動の背景には、複数の心理的欲求が複雑に絡み合っています。

1. 情報欲求(知識の不足を埋めたい)

非常事態においては、人は少しでも状況を把握し、身の安全を確保するための情報を得たいという強い欲求(情報欲求)に駆られます。
不正確な情報であっても、「情報がない状態」よりもはるかにマシだと感じ、それを信じ込み、共有しようとします。

2. 伝達欲求(ストレスの共有と解消)

自分が知った不安な情報を他者に伝えようとする心理です。
情報を伝えることで、相手と不安感を共有し、「一人ではない」という感覚を得ることで、自身の高まったストレスや緊張を一時的に解消しようとします。

3. 不安感情の正当化(自己防衛)

「非常事態なのだから、不安になるのは仕方ない」と自分に言い訳をし、自身の不安感情を正当化しようとします。
さらに、「みんなに知らせなければ」という使命感のようなものが加わり、結果的に他人を不安にするような噂話を広める行為すらも正当化してしまいます。

4. 理性の欠如(冷静さの喪失)

不安やパニック状態にあると、人は冷静さを失い、普段なら行うべき情報源の確認や事実調査を怠ります
その結果、人から聞いた話をすぐに事実として受け止め、深く考えずに他者に伝達してしまう行動に繋がります。


集団心理がデマを加速させる:「同調行動」の力

デマの拡散において、集団心理の影響は無視できません。

人は集団の中で、「とりあえず合意を求める」という同調行動を取りがちです。
たとえ自分がその情報に疑問を感じていたとしても、「周りのみんながそう言っているのだから間違いないだろう」「集団から外れたくない」という心理が働き、周囲の意見や行動に合わせてしまう傾向があります。

この「とりあえず同調する」という行動様式が、誤った情報や根拠のない悪意のある噂(陰口)が社会全体に広がるのを加速させます。

対策:個人に求められる「情報の停止」と「冷静な判断」

インターネットが世界中に普及した現代において、デマは文字通り一瞬で国境を超えて広まります

デマやパニックを防ぐためには、一人ひとりが情報を受け取った際に立ち止まり、その正確性を冷静に判断する姿勢を持つことが極めて大切です。
そして、不確実な情報や信憑性が低いと判断した情報については、それ以上広めずに「情報の伝達を停止させる」という意識を持つことが、社会全体の混乱を防ぐ鍵となります。

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