嘘がやめられないのは病気のサイン?病的虚言と関連する精神疾患(依存症・パーソナリティ障害)

日常生活において嘘はつきものですが、必要もない嘘を頻繁につく四六時中嘘をつき続けることで社会生活に支障をきたす場合、それは単なる性格の問題ではなく、「病的虚言(Pathological Lying)」や何らかの精神疾患の兆候である可能性があります。

ここでは、嘘が止められない行動と深く関わる精神的な問題について解説します。

病的虚言とは?

病的虚言は、明確な利益がないにもかかわらず、習慣的かつ強迫的に嘘をついてしまう状態を指します。
この行為は、多くの場合、特定の精神疾患(依存症やパーソナリティ障害など)の症状の一部として現れます。

嘘と密接に関わる依存症の心理

依存症(嗜癖)は、特定の行動や物質(アルコール、薬物、ギャンブルなど)への欲求が抑えられなくなる精神状態です。
依存が深刻化すると、その対象を得るため、あるいは依存状態を隠すために、周囲に対して嘘をつくことが常態化します。

依存症患者が嘘をつくメカニズム

  • 隠蔽: 依存対象の使用や行動を隠し、非難や介入を避けようとする。
  • 責任転嫁: 自分の問題を外部のせいにし、現実から目をそらそうとする(例:「仕事のストレスのせいだ」)。

アルコール依存の簡易チェック(CAGEテスト)

嘘の背景に依存があるかを判断する一つの指標として、以下の「CAGEテスト」が使われます。

  1. 今までにお酒の量を減らさないといけないと思ったことがありますか?
  2. 今までに飲酒を責められ、腹が立ったりイライラしたりしたことがありますか?
  3. 今までに飲酒をうしろめたく思ったり、罪悪感を抱いたりしたことはありますか?
  4. 今までに朝酒や迎え酒をしたことがありますか?

【診断の目安】: 1つでも当てはまれば依存の可能性、2つ以上当てはまれば依存症の可能性が高いとされています。

嘘の行動パターンとパーソナリティ障害

パーソナリティ障害は、その人の思考や行動パターンが大多数の人と異なり、本人や周囲が苦痛を感じる精神疾患の総称です。
この中には、嘘や衝動的な言動が目立つタイプが複数あります。

パーソナリティ障害嘘の行動と心理的背景
妄想性根拠なく「自分が利用されている」「危害を加えられる」という強い妄想に基づき、自分を守るための防御的な嘘をつく。
自己愛性常に自分が中心でないと気が済まない。
自分の優位性を保つため、事実を歪曲して自分を大きく見せる嘘(背伸びの嘘)を平気でつく。
他人への共感性が乏しい。
境界性人からの評価を過度に気にする
「見捨てられる」ことへの恐怖から、その場しのぎですぐにバレる衝動的な嘘をついてしまうことが多い。
感情の起伏が激しい。
回避性人から笑われたり仲間外れにされたりすることを極度に恐れる。
社会的な交流を避けるため、嘘の理由をつけて約束をキャンセルするなど、防御的な行動が見られる。

自分を偽り続けるミュンヒハウゼン症候群

ミュンヒハウゼン症候群は、周囲の関心や同情を引くことを目的に、自分の身分や経歴を偽ったり、病気の症状を演じたり、あるいは自ら作り出したりする精神疾患です。

病名は、有名な童話『ほらふき男爵の冒険』のモデルとなったドイツの貴族、ミュンヒハウゼン男爵に由来しています。

  • 行動
    経歴を偽って自分を立派に見せたり、実際は健康であるにもかかわらず病人を演じたりする。
  • 悪化時の危険性
    症状をよりリアルに見せるため、薬を不正に使用したり、自傷行為に走るなど、深刻な身体的状態を招く危険性があります。

病的虚言の背景には、これらの複雑な心理的・精神医学的な問題が潜んでいることが多いため、嘘が止まらない状況にある場合は、専門家への相談を検討することが重要です。

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