同調行動とは?集団心理が個人を支配するメカニズム
私たちは、自分の信念や判断と異なる場合でも、「周りに合わせる」行動をとることがあります。
これが同調行動(同調性)です。
同調行動は、集団の中で孤立することを避け、安全や帰属意識を確保しようとする人間の本能的な心理によって引き起こされます。
周りが「不正」をすれば、自分も不正をしてしまう
「赤信号を渡ってはいけない」と分かっていても、大勢の人が無視して渡っていると、ついつい自分も渡ってしまう、といった経験はありませんか?
これは、してはいけないことだと認識していても、集団の規範や行動に流されてしまう同調行動の典型例です。
科学が証明した同調行動の強烈な影響力(アッシュの同調実験)
同調行動が個人の判断に与える影響の大きさは、有名な心理学実験で明らかになっています。
ある実験では、誰でも正解が分かる簡単なクイズにもかかわらず、サクラ(周りの人)が意図的に不正解を選ぶと、実験参加者の約3人に1人が、内心で正解が分かっているにもかかわらず、その不正解に同調して嘘の答えを選びました。
これは、自分の確信よりも「周りから浮きたくない」「場を乱したくない」という心理が優先され、無意識のうちに集団に合わせてしまうことを示しています。
同調行動がもたらす社会的なメリットとデメリット
同調行動は、単なる日常の現象に留まらず、社会全体に大きな影響を与えます。
日常生活での同調行動
- メリット: 流行やトレンドの共有、協調性の維持、スムーズな集団活動。
- デメリット: 行列に意味もなく並ぶ、デマを信じる、誤った情報に流される。
有事における同調行動の危険性
同調行動が特に危険な影響を及ぼすのは、戦時下や大災害などの有事です。
パニックや恐怖心が高まる状況下では、個人の理性的な判断が鈍り、悪質なデマの拡散、略奪行為、パニックによる集団事故など、非倫理的な行動や犯罪行為に同調しやすくなってしまいます。
日本社会特有の「同調圧力」と「出る杭は打たれる」文化
同調行動は世界中で見られますが、特に日本は、同調圧力(集団の意見や行動に沿うよう強制する無言の力)が強く働く国柄だと言われています。
- 教育の影響
日本の学校教育では、古くから「みんなと同じように」行動することが求められる傾向があります。 - 文化的な背景
「出る杭は打たれる」という言葉に象徴されるように、人と同じでない行動や意見は非難されやすい文化があり、これが集団行動をとりやすい土壌となっています。
他者に流されない「強い意志」を持つために
同調圧力は、個人の個性や創造性を抑圧する側面を持ちます。
安易に他者に流されず、集団の不正や誤りに屈しないためには、主体性を持った意志を確立することが大切です。
同調行動のメカニズムを理解し、自分の判断軸を持つことが、集団の中で流されることなく、理性的な行動をとるための第一歩となると思います。

