サルコペニア予防ガイド|カギは「タンパク質」と「筋力トレーニング」にあり!

フレイルイメージ 健康全般

年齢を重ねるごとに「以前より疲れやすくなった」「立ち上がる時につらさを感じる」「ちょっとした段差でつまずきそうになる」――もし、こうした変化を感じているなら、それはサルコペニアという状態のサインかもしれません。
サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉の量と筋力が減少し、身体能力が低下していく進行性の症候群です。
単なる老化現象と見過ごされがちですが、放置すると生活の質が著しく低下し、将来的にはフレイル(心身の虚弱状態)を経て、要介護状態へとつながる深刻な問題です。
すが、筋肉はいくつになっても鍛えることができ、適切な対策を講じることで、サルコペニアの進行を遅らせ、健康寿命を延ばすことが可能です。
その予防策の二本柱となるのが、適切なタンパク質摂取効果的な筋力トレーニング

サルコペニアとは何か?なぜ予防が重要なのか?

サルコペニアは、特に私たちの日常生活を支える上で重要な「抗重力筋」に顕著に現れます。
具体的には、姿勢を保つ背中の背筋、体幹を支える腹筋、立ち上がりや歩行に不可欠な太ももの膝伸筋群(大腿四頭筋など)、そして力強い動きを生み出すお尻の臀筋群などがあります。
これらの筋肉が衰えると、まず立ち座りや階段の上り下りが困難になり、次に平地での歩行にも影響が出始めます。
ひどくなると、少しの段差でつまずいたり、バランスを崩して転倒しやすくなるため、骨折のリスクも高まります。

「最近、頻繁につまずくようになった」「椅子から立ち上がる際に思わず手をついてしまう」といった症状は、サルコペニアがかなり進行している可能性があります。
多くの場合、ご本人や周囲の人はこれを単なる不注意や注意力不足のせいだと考えがちですが、実はその背景に筋肉量の低下、すなわちサルコペニアが潜んでいるケースが少なくありません。

この筋力低下に早期に気づき、積極的に筋肉を鍛えるトレーニングと適切な栄養摂取を行うことが、その後の活動的な生活を安定させるために非常に重要な鍵となります。

筋肉の材料「タンパク質」|毎食0.4g/kg体重の重要性

筋肉の維持と増加には、その「材料」となるタンパク質の摂取が不可欠です。
食事からタンパク質を摂取すると、体内でアミノ酸に分解され、血液中に吸収されます。
このアミノ酸が筋肉細胞に運ばれることで、筋肉のタンパク質合成が促進され、同化作用(筋肉を増やす働き)が活性化されます。

最近の研究では、高齢者のタンパク質摂取に関して、1日あたりの総摂取量だけでなく、3食それぞれの食事に含まれるタンパク質の量に注目が集まっています。
ある報告では、体重1kgあたり0.4gのタンパク質を摂取すると、筋タンパク質合成が最大化されることが示されているようです。
若年者の場合は0.24g/kgで最大化するとされているため、高齢者は若年者よりも多くのタンパク質が必要になることが分かります。

日本人の食生活を国民栄養調査で見ると、タンパク質摂取量が3食で不均等であり、特に朝食での不足が指摘されています。
健常な高齢者は、朝・昼・夕の3食でタンパク質をバランス良く均等に摂取しているのに対し、フレイルと診断された高齢者は、朝食のタンパク質摂取量が少なく、昼食に偏りがちな傾向が見られます。
これは何を意味するのでしょうか?
たとえ1日の総タンパク質摂取量が推奨量を満たしていても、朝食や夕食など、いずれかの食事でタンパク質が不足していると、筋肉の合成が十分に刺激されず、長期的に見てサルコペニアの進行を招く可能性があるということです。
筋量を維持し、増やしていくためには、年齢に関わらず、3食すべてで適切な量のタンパク質を摂取することが極めて重要と言えます。

【具体的なタンパク質摂取のヒント】

  • 毎食、体重1kgあたり約0.4gのタンパク質を目標にしましょう。
    例えば、体重60kgの方であれば、毎食約24gのタンパク質摂取が目安となります。
  • 朝食
    パンとコーヒーだけでなく、卵料理(ゆで卵2個で約12g)、納豆(1パックで約7g)、ヨーグルト(100gで約4g)、鮭一切れ(約20g)などを追加して、タンパク質を補強しましょう。
  • 昼食・夕食
    肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆など)、乳製品(牛乳、チーズなど)をバランス良く取り入れ、偏りなく摂取することを心がけましょう。
    主菜となるおかずでしっかりとタンパク質を摂ることがポイントです。
  • 間食
    どうしてもタンパク質が不足しがちな場合は、プロテインドリンクや高タンパク質ヨーグルト、チーズなどを間食に取り入れるのも効果的です。

筋力トレーニングで筋肉を刺激し、タンパク質効果を高めよう

レジスタンストレーニング、いわゆる筋力トレーニングは、筋肉に物理的な負荷をかけることで、筋肉の合成を強力に刺激する最も効果的な方法です。
筋力トレーニングを行うと、運動後1~2時間で筋タンパク質合成が有意に増加し始め、この高まった状態が24~48時間程度持続するとされています。
これを定期的に、そして長期的に継続することで、筋量と筋力が着実に増加していくのです。

そして、このトレーニングによる筋肉増加の効果を最大限に引き出すためには、適切なタンパク質摂取が不可欠です。
これまでの研究報告から、トレーニング後やトレーニング前に質の良いタンパク質を摂取することで、運動後の筋タンパク質合成が、栄養を摂らない場合と比較して格段に増加することが明らかになっています。

さらに、興味深いことに、1日の総タンパク質摂取量が同じであったとしても、3食すべてでタンパク質が均等に摂取されているグループの方が、摂取量が不均等なグループよりもトレーニングによる筋肥大効果が高いことが示されています。
これは、筋肉の合成が持続的に行われるためには、血中のアミノ酸濃度を一定に保つことが重要であり、そのためには朝・昼・夕の各食事で適切なタンパク質を摂取することが理想的である、ということを示していると言えます。

【サルコペニア予防のための筋力トレーニング例】

  • スクワット
    椅子に座るように腰を下ろしたり立ち上がったりする動作です。
    太ももやお尻の大きな筋肉を鍛えます。
  • カーフレイズ
    壁などに手をついて、かかとをゆっくり上げ下げする動作です。
    ふくらはぎを鍛え、歩行時のつまずき防止に役立ちます。
  • 腕立て伏せ(膝つきでもOK)
    胸や腕、肩の筋肉を鍛えます。難しい場合は、壁に手をついて行う「壁腕立て伏せ」から始めましょう。
  • 段差昇降
    低い段差を使って上り下りする動作です。
    バランス能力と足腰の筋力を同時に鍛えられます。

【運動実践のヒント】

  • 週に2〜3回、無理のない範囲で継続することが重要です。
  • 各動作は10回程度を1セットとし、2〜3セット行いましょう。
  • 痛みを感じたらすぐに中止し、無理は禁物です。
  • 可能であれば、専門家(理学療法士、健康運動指導士など)に相談し、ご自身の体力レベルに合った運動プログラムを作成してもらうことをお勧めします。

まとめ|今日から始めるサルコペニア予防の具体的なステップ

サルコペニアの予防と改善は、健康寿命を延ばし、自立した生活を長く送るために非常に重要な課題です。そのためには、以下の2つの柱を日常生活に積極的に取り入れることが不可欠です。

  1. 毎食、体重1kgあたり0.4g程度のタンパク質を摂取し、1日を通して均等に配分する。
  2. 週2〜3回程度のレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を継続的に実施する。

「まだ若いから大丈夫」「運動は苦手だから」「もう歳だから」と諦める必要は一切ありません。
筋肉は年齢に関わらず、適切な刺激と栄養を与えることで必ず応えてくれます。
今日からできることから少しずつ、タンパク質を意識した食事と、無理のない範囲での筋力トレーニングを始めてみませんか?
未来の健康と活動的な生活は、日々の小さな努力の積み重ねによって大きく変わっていくはずです。

この記事を書いた人
パーソナルトレーナー
和泉 大樹(イズミ ダイキ)

2012年に開業し、横浜市を中心に個人で訪問型の出張パーソナルトレーナーとして活動しています。トレーニングだけでなく、ストレッチに整体、食事や生活習慣のアドバイスもしています。
体験も受付けておりますので、興味のある方はお気軽にご相談ください。

~保有資格~
・NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定 パーソナルフィットネストレーナー)
・JATI-ATI (日本トレーニング指導者協会認定 トレーニング指導者)
・スポーツプログラマー(日本スポーツ協会認定)
・ACCA公認 アスレティックコンディショニングコーチ アドバンス
・YMCメディカルトレーナーズスクール 整体療術科 卒業
・健康管理士上級指導員(日本成人病予防協会認定)
・ヘルスケアアドバイザー(日本チェーンドラッグストア協会認定)
・3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP3級)
・資産形成コンサルタント(日本証券アナリスト協会認定)

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