産後の腰痛、原因は「抱っこの回数」よりも「動作の質」にあり?

腰痛

――262名の調査から見えた、理学療法士による動作指導の重要性

産後、多くの女性を悩ませるのが腰痛です。
身体的なつらさだけでなく、育児動作そのものを困難にするこの問題について、青森県立保健大学の研究グループが興味深い調査結果を報告しました(2026年3月公開)。

4割以上の女性が「中等度以上の腰痛」を抱えている

産後3〜11カ月の女性262名を対象としたWeb調査の結果、43.9%の人が「NRS4以上(中等度以上)」の腰痛を有していることが分かりました。
驚くべきことは、これほど多くの人が痛みを抱えているにもかかわらず、妊娠中や産後に専門家から「腰痛予防の指導」を受けた経験がある人はわずか4.6%しかいなかったという事実です。

腰痛に関連するのは「量」ではなく「質」

今回の研究で最も注目すべきは、抱っこの「時間」や「回数」といった量の側面は、意外にも腰痛の有無と直接関連していなかったという点です。

腰痛と強く関連していたのは、以下の3つのポイントでした。

1. 「床」から抱き上げる動作

乳児をベビーベッドや椅子からではなく、「主に床」から抱き上げる習慣がある人は、腰痛のリスクが有意に高い(オッズ比 2.24)ことが示されました。
床からの持ち上げは腰や股関節への負担が大きく、これを繰り返すことが物理的なストレスとなっていると考えられます。

2. 「横抱き」という抱き方

正面抱きや片側抱きに比べ、「横抱き」をよく行うことも腰痛に関連していました(オッズ比 2.03)。
これには「首がすわる(定頸)前」という乳児の発達段階が関係しています。
首がぐらつく時期は抱き方に制約があり、あやす時間も長くなりがちなので、お母さんの筋疲労や精神的負担が増しやすいことが背景にあると推測されています。

3. 精神的な健康状態(心のゆとり)

身体的な要因だけでなく、「精神的健康状態」が低いことも腰痛と関連していました。
睡眠不足や育児の不安といった精神的負荷が、痛みの感じ方や慢性化に影響を与えている可能性があります。

専門家(理学療法士)による支援の必要性

研究グループは、これらの結果から以下の対策を提言しています。

  • 動作指導の普及
    「床からどう抱き上げるか」といった具体的な身体の使い方を理学療法士などの専門家が指導していくことが重要である。
  • 多面的なサポート
    腰痛を単なる「身体の痛み」として捉えるのではなく、妊娠中からの精神的ケアも含めた包括的な支援が必要である。
  • 早期の受診
    「産後の腰痛は当たり前」と放置せず、重症化を防ぐために適切な医療情報にアクセスできる環境を整えるべきである。

まとめ

「抱っこのし過ぎ」ではなく、「どう抱くか」「どう持ち上げるか」という動作の質を改善することが、産後の腰痛を減らすのに重要となります。
自治体の産後ケア事業などを通じ、理学療法士による専門的なアドバイスを受ける機会を増やすことが期待されています。

参照元https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwhmhpt/3/0/3_jwhmhpt202505/_article/-char/ja
木村 文香, 河口 徹, 他「産後女性の腰痛に関連する要因の検討」ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学 第3巻(2026)

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