パソコン・マウス腱鞘炎とは?
「パソコン作業を長時間続けていたら、人差し指や手首が痛くなった」
普段からパソコン作業をしている方であれば、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
それは、パソコン腱鞘炎やマウス腱鞘炎と呼ばれる症状の可能性があります。
腱鞘炎とは、主に手や指の使い過ぎによって、指や手首などに痛みが生じる炎症のことです。
腱鞘炎のメカニズム
私たちの身体では、腱(けん)という組織が骨と筋肉を繋いでいます。
この腱が通るトンネルのような部分が腱鞘(けんしょう)です。
腱鞘は、腱を包み、滑らかに動くための潤滑油のような役割を果たしています。
指を繰り返し酷使し続けると、腱と腱鞘がこすれ合い、摩擦によって炎症が起こります。
この炎症が「腱鞘炎」です。
特に、パソコンやマウスの過度な使用によって引き起こされるものが、パソコン腱鞘炎またはマウス腱鞘炎と呼ばれています。
なぜ起こる?パソコン・マウス腱鞘炎の主な原因
腱鞘炎は、スポーツ選手や楽器演奏者など、手を酷使する職業の方に多い症状でした。
ですが、近年ではスマートフォンやパソコンの普及により、誰もがなり得る身近なものになっています。
主な原因は「繰り返しの動作と持続的な負担」
パソコン・マウス腱鞘炎の最も大きな原因は、以下の動作による特定の指や手首への持続的な負担です。
- マウスのクリック操作
特に人差し指など、クリックに使う指に負担が集中します。 - キーボードのタイピング
シフトキーやエンターキーなど、特定のキーを頻繁に強く押す指に負担がかかりやすいです。
スマホ腱鞘炎は親指の付け根などに症状が出やすいですが、パソコン腱鞘炎はタイピングやマウス操作という複雑な動作から、スマホ腱鞘炎よりも広範囲に痛みが出る可能性が高いのが特徴です。
長時間、長期間にわたり作業を繰り返すことで、最終的に腕全体にまで痛みが広がるケースもあります。
深刻化する前に!放置で悪化するリスク
「少し痛いだけだから」と腱鞘炎の初期症状を放置してしまうのは危険です。
症状が重くなると、日常生活に深刻な支障をきたすことがあります。
- 指の痛み・しびれ
コップを持つ、文字を書く、箸を持つといった簡単な動作すら困難になることがあります。 - 作業の中断
パソコン操作やスマートフォン操作ができなくなり、仕事や趣味に影響が出ます。
腱鞘炎は自然に治りにくい症状です。
悪化を防ぎ、快適な日常生活を維持するためにも、早期の対策が極めて重要になります。
今日からできる!パソコン腱鞘炎の予防・対策
痛みが出てしまう前に、また初期症状のうちに対策を講じましょう。
腱鞘炎を予防する最大のポイントは、「指や手首への負担を減らすこと」です。
患部を「休ませる」を最優先に
痛みが現れたら、まず指に負担をかけないことが最も重要です。
- 作業時間の短縮
仕事などで完全にパソコンの使用をやめるのが難しい場合でも、休憩をこまめに取り、使用時間を意識的に減らしましょう。 - 安静
可能な限り、患部の指や手を休ませましょう。
ツールを活用し負担を軽減する
作業環境を見直すことで、手や手首にかかる物理的な負担を減らすことができます。
- リストレスト・ハンドレスト
デスクトップPCの場合、キーボードやマウスの手前に置いて手首の角度を調整し、負担を軽減してくれます。 - ノートPCスタンド
ノートPCに傾斜をつけることで、タイピング時の手首の不自然な曲がりを防ぐことができます。
セルフケアで炎症をコントロールする
初期症状(急性期)の場合
症状が出てから2〜3日程度の初期の炎症が強い時期は、アイシング(冷却)が有効です。
患部を冷やすことで炎症を抑えることができます。
慢性的な症状の場合
痛みが続く、慢性的な症状の場合は、温めて血液循環を良くする方が効果的です。
蒸しタオルなどで手や指を温めてみましょう。
ストレッチと運動を取り入れる
休憩時間などを活用して、手や指、腕全体のストレッチを取り入れ、血行を良くし、筋肉の緊張をほぐしましょう。
【簡単なストレッチ例】
- 手のひらを上に向けて腕をまっすぐ前に伸ばします。
- 反対の手で、指先を下向きに優しく引っ張り、手首から前腕にかけての筋肉を伸ばします。
- 手のひらを下に向けて同様にストレッチします。
テーピングやサポーターの利用
作業中にテーピングやサポーターを使うことで、患部への負担を軽減し、無意識の動きを制限することができます。
悪化したら迷わず医療機関へ
「何をしても痛みが引かない」「日常生活に支障が出始めている」といった場合は、自己判断せずに整形外科などの医療機関を受診するようにしましょう。
専門医の診断と治療を受けることが、早期回復への一番の近道です。
腱鞘炎は、私たちの現代の働き方、暮らし方と密接に関わる問題と言えます。
日頃から予防を意識し、快適なデジタルライフを送れるようにしましょう。