なぜ「平熱36.5℃」が理想なのか?体温と免疫機能の密接な関係
ご自身の平熱(へいねつ)を正確に把握していますか?
健康な身体を維持する上で、体温は非常に重要な指標となります。
一般的に、理想的な平熱は36.5℃程度とされており、この体温を安定して保てている人は、病原体への抵抗力、すなわち免疫機能が高いと考えられています。
免疫機能は非常に複雑なシステムであり、その全貌はまだ完全に解明されていません。
しかし、体温が高い状態では、体内に存在する免疫細胞(リンパ球や白血球など)の働きが活性化することが分かっています。
風邪やインフルエンザにかかった際に体温が上がるのは、身体が自ら熱を上げて免疫細胞を活発化させ、ウイルスと戦おうとしているからです。
もし平熱が35℃台と低い場合、それは「低体温」の状態であり、体内で熱をうまく作り出せていない可能性があります。
平熱が低い状態は、免疫細胞の働きが鈍り、免疫力が弱くなっているサインかもしれません。
免疫力の土台を作る「筋肉」|体温を決める焼却炉
では、どうすれば平熱を理想とされる36.5℃に近づけ、安定させることができるのでしょうか?
そのカギを握るのが、私たちの身体の大部分を占める「筋肉」です。
筋肉は単に身体を動かすための組織ではありません。
体内で摂取した糖質、脂質、タンパク質といったエネルギー源を「燃やし」、必要なエネルギーを作り出す、いわば「生体内の焼却炉」のような役割を果たしています。
このエネルギー生成の過程で熱(体熱)が発生し、それが体温、特に生命維持に必要な基礎体温を高く保つことに直結しています。
- 筋肉量が多い人
熱の生産能力が高い
平熱が安定して高い傾向
- 筋肉量が少ない人
熱の生産能力が低い
平熱が低い傾向
実際、統計的にも筋肉量が多い人の方が、病気による死亡率が低いという相関関係が報告されています。
これは、筋肉が直接的・間接的に免疫機能の土台を支えているためと考えられます。
平熱が低くて悩んでいる方は、意識的に運動を取り入れ、筋肉を増やすことが、免疫機能向上への具体的な一歩となると思います。
免疫細胞の「栄養」を蓄える筋肉|グルタミンと体内の備蓄
筋肉の重要性は、体温を上げるだけにとどまりません。
免疫機能の維持に不可欠なアミノ酸(タンパク質の構成要素)の供給源としても極めて重要です。
特に、グルタミンというアミノ酸は、免疫細胞であるリンパ球の増殖を助ける「栄養源」として機能することが知られています。
風邪や大きなストレスなどで身体が病原体と戦っている状態では、このグルタミンが体内で大量に消費されます。
筋肉は、このグルタミンを体内に大量に蓄えておくための最大の「貯蔵庫」です。
- 筋肉量が多い
グルタミンの貯蔵量が多い
病気やストレス時に免疫細胞へ素早く栄養を供給できる
十分な筋肉量があれば、病気に対抗する免疫システムを強力にサポートできる「グルタミンの備蓄」ができている状態と言えます。
また、グルタミンは血糖値の急激な上昇を抑える働きや、動脈硬化・糖尿病といった生活習慣病の予防にも関与していると考えられています。
最も大切なこと|規則正しい生活と継続的な筋肉への刺激
免疫機能は未だに複雑で、体温と免疫力の相関関係についても、科学的に厳密な根拠が完全に確立されているわけではありません。
ですが、「健康的な生活習慣を送っている人ほど、代謝が改善され、平熱も高くなる傾向にある」という事実は、紛れもない相関関係を示しています。
残念ながら、筋肉は一般的に30歳を過ぎると少しずつ衰え始めます。
病気に負けない身体、高い免疫機能を維持するためには、筋肉をただ維持するだけでなく、意識的に鍛え、増やす努力が欠かせないと思います。
体温を上げ、免疫細胞の栄養を確保するために、今日からできる最も大切なことは、「規則正しい生活習慣」です。
- 食生活の改善
筋肉の材料となるタンパク質(アミノ酸)をしっかりと摂取する。 - 適度な運動の継続
定期的に筋肉に刺激を与え、筋肉量の維持・増加を図る。 - 十分な睡眠の確保
身体の修復と免疫機能が活発になる時間を確保する。
筋肉を鍛え、平熱を理想的な状態に保つことが、あなたの生涯にわたる健康と免疫機能を守るための、最も確実な土台となるはずです。