肩甲骨を動かすことでやせられるという「肩甲骨ダイエット」。テレビや雑誌で紹介され、試したことがある人もいるかもしれません。
このダイエット法は、肩甲骨の周りにあるとされる褐色脂肪細胞を活性化させ、脂肪を燃焼するという仕組みが謳われていますが、「肩甲骨を動かすことで褐色脂肪細胞が活性化してやせる」という直接的な科学的根拠は、まだ証明されていないようです。
では、なぜ「肩甲骨ダイエットでやせた」という人がいるのでしょうか。
この記事では、褐色脂肪細胞の本当の役割と、ダイエットにおける正しいアプローチについて解説していきたいと思います。
褐色脂肪細胞の正体とは?
私たちの体には、主に2種類の脂肪細胞が存在します。
一つは、余分なエネルギーを脂肪として蓄える白色脂肪細胞。そしてもう一つが、脂肪を燃やして熱を生み出す褐色脂肪細胞です。
褐色脂肪細胞は、特に赤ちゃんや冬眠する動物に多く見られます。
これは、自力で体温調節が難しい彼らが、寒さから身を守るために効率よく熱を作り出す必要があるからです。
大人になるとその数は減り、機能も低下していきますが、首の周り、鎖骨のくぼみ、そして肩甲骨の周りといった特定の場所に残っています。
この「肩甲骨周りに褐色脂肪細胞が多い」という事実が、「肩甲骨を動かせばやせる」という説の根拠になっています。
ですが、肩甲骨を動かすという行為自体が、褐色脂肪細胞を活性化させる直接的な刺激にはならないと考えられています。
多くの人がやせる本当の理由
褐色脂肪細胞が活性化するわけではないのに、なぜ肩甲骨ダイエットでやせる人がいるのでしょうか?
その理由は、ダイエットの基本原則にあります。
- 筋肉の活動量増加:
肩甲骨周りは普段意識して動かすことが少ないため、動かすと、僧帽筋(そうぼうきん)などといった大きな筋肉が使われ、その結果カロリー消費量が増加します。 - 姿勢の改善と代謝アップ
猫背などで肩甲骨周辺が固まっていると、血流やリンパの流れが悪くなり、代謝が落ちて太りやすい体質になります。
肩甲骨を動かすことで、姿勢が改善され、全身の血流が促進されることで、基礎代謝が上がりやすくなりることが期待できます。 - 生活習慣の意識向上
「肩甲骨ダイエットを始めた」という意識が、食事内容に気をつけたり、他の運動を取り入れたりするきっかけになることも多いです。
結果的に摂取カロリーが減り、消費カロリーが増えたことで、体重が減るというケースが考えられます。
これらは、褐色脂肪細胞とは無関係に、ダイエット効果を生み出す要因です。
褐色脂肪細胞を本当に活性化させるには?
もし褐色脂肪細胞の力を借りてダイエットしたいのであれば、より科学的な方法に目を向けるのが賢明です。
最も効果的だとされているのは寒冷刺激です。
寒い環境に身を置いたり、冷たい水を浴びたりすることで、体温を維持しようと褐色脂肪細胞が活発に働き始めます。
また、有酸素運動も褐色脂肪細胞に良い影響を与えるという研究結果も出ているようです。
ジョギングやサイクリングなどを継続的に行うことで、褐色脂肪細胞から放出される物質が、エネルギー消費を促す可能性があるとされています。
まとめ
「肩甲骨ダイエット」は、褐色脂肪細胞を活性化してやせるというわけではないと思います。
ですが、肩甲骨を動かすことによって筋肉の活動量を増やしたり、姿勢を改善したりといった効果が期待でき、結果的にダイエットに繋がる可能性があります。
本当に褐色脂肪細胞を活性化させたいのであれば、肩甲骨の運動よりも「寒冷刺激」や「有酸素運動」がより効果的だと考えられます。
はいえ、ダイエット成功の最も確実な方法は、流行りの方法に頼ることなく、「食事の管理」と「適度な運動」という基本を地道に続けることです。
無理のない範囲で生活習慣を見直し、健康的な身体を目指しましょう。