油は悪者ではない!現代日本人が知るべき「脂質」の役割
長きにわたり、油(脂質)はカロリーが高く、肥満の原因として「悪者」扱いされてきました。
特に1980年代から90年代にかけては、ダイエットブームの高まりとともに、脂質を極端に控える傾向が強まりました。
実際に脂質は炭水化物やタンパク質に比べてグラムあたりのエネルギー量が多いのは事実です。
摂り過ぎればカロリーオーバーになり、健康を損なう原因になります。
ですが、現代日本人の1日あたりの平均摂取カロリーは終戦直後の食糧難の時代よりも低い約1,890kcal(※数値は目安)と言われており、「カロリーが高いから」という理由だけで脂質を避けるのは間違いです。
脂質は身体にとって「必須」の栄養素
油である脂質は、私たち約60兆個の細胞すべてを構成する細胞膜の主要な原料であり、生命維持に不可欠な栄養素です。
脂質が十分に摂取できていると、新陳代謝が活発になり、健康的な身体の維持に非常に重要な役割を果たします。
単にエネルギー源としてだけでなく、ホルモンやビタミンの吸収にも関わる「大切な構成要素」として脂質を捉えることが、正しい健康管理の第一歩です。
摂取すべき「良い油」と避けるべき「悪い油」の見分け方
油にはさまざまな種類があり、健康への影響も異なります。
避けるべき「悪い油」|トランス脂肪酸
身体にとって良くない油の代表格がトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は動脈硬化を促し、心臓病などのリスクを高めることが国際的に指摘されています。
欧米では厳しく規制されていますが、日本では法的な規制がないため、意識的に避けることが大切です。
- 多く含まれる食品
マーガリン、ショートニング、これらを原料とする加工食品、菓子パン、揚げ菓子など。
健康維持のためには、これらの加工品の摂取を極力控えることが、トランス脂肪酸の過剰摂取を防ぐ最も簡単な方法です。
積極的に摂りたい「良い油」|オメガ3とオメガ9
一方、積極的に摂りたいのが、オメガ3系(n-3系)脂肪酸とオメガ9系(n-9系)脂肪酸と呼ばれる良質な油です。
これらの脂質は、現代の日本人に不足しがちなため、意識的な摂取が推奨されています。
- オメガ3(n-3系)
体内で合成できない「必須脂肪酸」。
炎症を抑える、血液をサラサラにするなど重要な働きがあります。 - オメガ9(n-9系)
体内で合成可能ですが、酸化しにくく、生活習慣病の予防に役立つと言われています。
ただし、良い油であっても摂り過ぎればカロリーオーバーになります。
不足している現状を改善するために、「積極的に摂りましょう」と言われている点を理解することが重要です。
【実践】オメガ3・オメガ9を毎日手軽に摂るための方法
良質な油を日々の食事に無理なく取り入れるには、「調味料のように」少しずつ使うことがポイントです。
普段使いの油を切り替える
現在ご家庭で使っているサラダ油などを、オメガ9系の「オリーブオイル」やオメガ3系の「アマニ油」「えごま油」などの良質な油に切り替えてみましょう。
オメガ3系は「加熱せず生」で摂取
オメガ3系脂肪酸(アマニ油、えごま油など)は熱に非常に弱いため、加熱せずにそのまま摂取するのが効果的です。
- 使い方
醤油と同じように、冷奴、おひたし、和え物、サラダなどに少量かけて食べるのが手軽です。
独特の風味が苦手な場合の工夫
えごま油などは独特の風味があるため、そのままでは摂りにくいと感じる方もいます。
- 風味の強い料理に混ぜる
カレー、キムチ、納豆など、元々味や香りが強い料理に加えると、風味を気にせず摂取できます。 - 青魚やクルミで代用
青魚(サバ、イワシなど)やクルミにもオメガ3系脂肪酸が豊富です。
魚料理を増やす、またはクルミを1日10粒程度を目安に間食として取り入れるのも良い方法です。
摂取タイミングと相乗効果
油は食品であるため、基本的に1日のどのタイミングで摂取しても問題ありません。
特に脂溶性ビタミン(ビタミンA、Eなど)と一緒に摂ると、油の吸収率が上がり、栄養素を効率よく摂ることができます。
緑黄色野菜と一緒に油をドレッシングとして摂るのがおすすめです。
また、抗酸化作用のあるビタミンCを一緒に摂ることで、体内で油の酸化を防ぐ効果も期待でき、より健康的です。
食生活を見直し、良質な油を無理なく、継続して摂取する工夫を始めてみてはいかがでしょうか?