過換気症候群(過呼吸)とは?
過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)は、「過呼吸」とも呼ばれ、精神的な不安やストレスなどが引き金となって、自分の意志では呼吸がコントレールできず、深くて速い呼吸を繰り返す症状のことです。
酸素が足りないのではなく二酸化炭素を多く輩出するのが原因
過換気症候群では、酸素は取り込めていても血液中の二酸化炭素が減っている状態です。
二酸化炭素(CO2)が減り過ぎると、血液がアルカリ性に傾き(呼吸性アルカローシス)、これが様々な不快な症状を引き起こします。
精神的ストレスと肉体的ストレスが原因
強い興奮や不安、恐怖、緊張が原因として挙げることができます。
几帳面な人や心配性の人、緊張しやすい人に起こりやすとされています。
また、激しい運動の後、睡眠不足で疲れが溜まっている時、暑いところで運動や作業をしていた時、風邪を引いたりした後などの肉体的ストレスが引き金になることがあります。
他にパニック障害や精神疾患、不安障害を持っている人がなりやすい傾向があります。
見逃せない主な症状リスト
発作中の症状は非常に多様で、パニックを引き起こしがちです。
症状の種類 | 具体的な症状 | 発生の原因 |
呼吸器症状 | 息苦しさ、窒息感、胸の圧迫感 | CO2の低下により呼吸中枢が過敏になるため。実際には酸素は十分足りています。 |
神経・筋肉症状 | 手足等のしびれ、筋肉の痙攣(テタニー) | 血液中の二酸化炭素濃度が下によりカルシウムイオンの働きが変化するため。 |
循環器・全身症状 | 動悸、めまい、立ちくらみ、冷や汗、吐き気 | 脳血管の収縮や自律神経の乱れによるもの。 |
【重要】過換気症候群に関する3つの大きな誤解と真実
過換気症候群には、不適切な対応や不安を増幅させる誤解が多く存在します。
正しい知識を持つことが発作の予防と対処に繋がります。
誤解1|「息ができていないから、もっと深く息を吸わなきゃ」
❌誤解
息苦しいのは酸素が足りていないからだ。
✅真実
過換気症候群は、酸素が足りないのではなく、二酸化炭素が減り過ぎている状態です。
深く息を吸い続けると二酸化炭素がさらに排出され、症状が悪化します。
誤解2|「紙袋(ペーパーバッグ)で呼吸すれば治る」
❌誤解
発作が起きたら、必ず紙袋を使うべきだ。
✅真実
以前は、推奨されていた紙袋法(ペーパーバック法を)は、現在では推奨されていません。
酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が高くなる可能性があるためです。
運動誘発性ぜんそくやのどに違和感や異物感、つまり感がある口咽頭異常感症でも息苦しさを感じますが、その時にペーパーバック法をすると命の危険があります。
他の病気が隠れている場合もあるので安易にペーパーバック法をするべきではありません。
現代の対処法
現在は安心させることとゆっくりした呼吸を促すことが主流です。
吸うときよりも2倍の時間をかけてゆっくりと息を吐くようにします。
過換気症候群では、口を開けて呼吸をしていることが多いので、口をすぼめて腹式呼吸を意識するのも良いです。
誤解3|「精神的なものだから、気合いで治せる」
❌誤解
精神力でコントロールできる、甘えの病気だ。
✅真実
主な原因は、心因性(ストレス、不安など)ですが、発作中に起こるしびれや痙攣は身体的な変化(CO2低下)によるもので、本人の意思ではコントロールできませんので、適切な理解とサポートが必要です。
過換気症候群発作が起きたときの安全な対処法
発作が起きたら、まずは「大丈夫、これは命に関わる病気ではない」と本人に伝え、安心させることが最優先です。
発作中の本人への対処法
- 安心させる
まず、「過呼吸(過換気症候群)だね、大丈夫」と声をかけ、不安を取り除くことに集中します。 - ゆっくりとした呼吸を誘導
- 「吸う」より「吐く」ことを意識させます。
- 息を吐く時間を長くするよう促します。(例:4秒かけて吸って、8秒かけて吐く)
- 一緒にゆっくりと呼吸を練習するのも効果的です。
- 意識をそらす
手足のしびれに意識が向くと不安が増すため、「手のひらをグーパーする」「足の指を動かす」など、別の行動を促すのも有効です。
根本的な予防と治療
過換気症候群の根本的な治療は、発作の引き金となっているストレスや不安を軽減することです。
- 心療内科・精神科の受診
症状を繰り返す場合、パニック症などの不安障害が隠れている可能性があります。
専門医に相談し、薬物療法や認知行動療法などの治療を受けることが大切です。 - 日頃のストレス管理
規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動などで自律神経のバランスを整えることが予防に繋がります。
まとめ
過換気症候群は、心身のSOSが呼吸の乱れとして現れる状態です。
最も大切なのは、「息ができない」という強烈な苦痛にパニックを起こさないことです。
- これは命に関わる病気ではありません。
- 酸素は足りています。
- 必要なのは二酸化炭素を増やす、ゆっくりとした呼吸です。
周囲の人が正しい知識を持ち、冷静に対応することで、発作を短時間で収束させることができます。
もし発作を繰り返す場合は、必ず医療機関に相談するようにしましょう。