酵素ドリンクやサプリは効果なし?「体内に吸収されない」の真実
巷でよく聞かれる「酵素は健康に良い」「ダイエットやアンチエイジングに役立つ」といった話があるかと思います。
酵素ドリンクやサプリメントといった商品も多く、実際に試している方もいるかもしれません。
ですが、本当に口から摂った酵素に期待通りの効果はあるのでしょうか?
実は、「口から摂取した酵素は、そのままの形では体内に吸収できない」という科学的な事実があります。
これはどういうことか、詳しく見ていきましょう。
そもそも酵素とは?栄養素ではない、生命維持に不可欠な「触媒」
「生きた酵素」というフレーズもありますが、酵素は特定の栄養素でも生物でもありません。
酵素とは、私たちの生命活動に必要な化学変化を促進(触媒)するタンパク質の一種です。
例えば、
- 食べ物を消化して、体内に吸収できる形に分解する
- 吸収した栄養素を使って、身体の組織やエネルギー源を代謝する
といった、体内で起こるあらゆる化学反応をスムーズに進める役割を担っています。
私たちの身体が正常に機能し、生命を維持するためには、酵素の働きが不可欠なのです。
酵素は加齢で減る?不足するとどうなる?
この生命に欠かせない酵素の量は、加齢とともに減少していく可能性があると言われています。
酵素が減ると、体内で円滑な化学変化ができなくなり、消化不良や代謝の低下といった体調不良につながりやすくなります。
この「酵素の減少」を補い、体調を改善するために「酵素を外から摂ると良い」という考えが広まったようです。
なぜ酵素は「そのままの形」で吸収できないのか?
結論から言うと、酵素は分子量が大きすぎるタンパク質だからです。
口から摂った食べ物や物質は、体内に吸収される前に「消化」というプロセスを経ます。
消化とは、分子量の大きい食べ物を、腸の壁から吸収できるほど小さい分子にまで分解する作業のことです。
酵素も例外ではなく、その主成分はタンパク質です。
タンパク質は分子量が非常に大きいため、そのままでは吸収できません。
そのため、消化酵素によってタンパク質の構成成分であるアミノ酸まで徹底的に分解されてしまいます。
そして、分解されたアミノ酸が体内に吸収されてしまいます。
吸収されたアミノ酸が酵素になる保証はない
体内に吸収されたアミノ酸は、私たちの身体にとって重要な材料となります。
- 髪の毛、爪、皮膚、筋肉
- 臓器、ホルモン
- またはエネルギー源
など、身体が必要としている様々なものに再合成されます。
この時、吸収されたアミノ酸が「体内の酵素」として再び再合成されるかどうかは、体内の需要によって決まるため、保証はありません。
つまり、口から酵素ドリンクなどを飲んでも、酵素そのものの効果として体内に取り込まれるわけではないので、「意味がない」と考えになります。
体内の酵素を増やすには?正しい「酵素の摂り方」
では、体内の酵素を増やしたり、その働きをサポートしたりするにはどうすれば良いのでしょうか?
体内で酵素を作り、その働きを維持するための根本的なアプローチは、酵素の「材料」と「補酵素」をしっかりと摂ることです。
1. 酵素の材料となる「タンパク質」を摂る
酵素の主成分はタンパク質です。
体内の酵素量を増やすためには、その材料であるタンパク質の構成成分、つまりアミノ酸をしっかりと摂取することが最も重要です。
肉、魚、卵、大豆製品など、普段の食事から良質なタンパク質を不足なく摂ることを意識しましょう。
2. 酵素の働きを助ける「補酵素(ビタミン・ミネラル)」を摂る
酵素が効率よく働くためには、ビタミンやミネラルといった栄養素が必要になります。
これらは「補酵素」と呼ばれ、酵素の働きをサポートする重要な役割を持っています。
様々な種類の野菜、果物、海藻類などから、ビタミンやミネラルといったその他の栄養素もバランス良く摂取することが不可欠です。
まとめ|大切なのはバランスの良い食事
体内の酵素を減らさないためにできる、最も確実で大切なことは、特定のサプリメントに頼ることではなく、普段からタンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取する食事を心がけることです。
消化の仕組みを知れば、「酵素は吸収できない」からこそ、「何を」「どう摂る」のが本当に体のためになるのかが見えてきます。
特定の酵素ドリンクなどの商品に過度な期待をするのではなく、日々の食生活を見直すことから始めてみましょう。