「成長期に筋力トレーニングをすると背が伸びなくなる」という話を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
これは、筋トレが骨や関節に負担をかけ、身長の伸びを妨げるという懸念から生まれたものです。
しかし、これは科学的根拠のない完全に間違った迷信です。
実際には、適切な筋力トレーニングが身長の伸びに直接悪影響を与えることはありません。
むしろ、正しい知識を持って実践すれば、身体の成長に良い影響を与える可能性すらあります。
身長は筋トレで決まらない!遺伝子と環境要因の真実
人の身長は、90%以上が遺伝子によって決まると言われています。
両親が高身長であれば、その子どもも高身長になる可能性が高く、逆に両親が低身長であれば、子どもも低身長になる可能性が高くなります。
遺伝子は、私たちの体の設計図であり、身長だけでなく、身体つきや顔立ち、体質など、ありとあらゆる特徴をある程度決定づけています。
ですが、遺伝子だけがすべてではありません。
残りの10%は環境要因が影響します。
環境要因とは、日々の生活習慣や健康状態のことです。
具体的には、バランスの取れた食事、質の良い睡眠、そして適度な運動などがこれにあたります。
これらの環境が良ければ、本来持っている遺伝子のポテンシャルを最大限に引き出すことができるます。
例えば、十分な栄養を摂り、成長に不可欠な睡眠を確保し、適度な運動を心がけることで、遺伝子に定められた身長の限界まで成長することが期待できます。
もし、成長期に栄養不足や睡眠不足、運動不足が続けば、たとえ高身長の遺伝子を持っていても、その可能性を十分に引き出せないまま身長の伸びが止まってしまうこともあります。
筋トレは身長の伸びにプラスになる可能性も!成長ホルモンの秘密
成長期に筋力トレーニングをすると身長が伸びにくくなるどころか、むしろプラスに働く可能性すらあります。
なぜなら、筋トレが内分泌系を刺激し、成長ホルモンの分泌を促すと考えられているからです。
成長ホルモンは、脳下垂体から分泌されるホルモンで、骨や筋肉の成長を助ける重要な役割を担っています。
特に、思春期から成長期にかけて大量に分泌され、この時期に身長が急激に伸びる大きな要因の一つとなっています。
筋力トレーニングのような適度な運動は、この成長ホルモンの分泌を活発にすることが研究によって示唆されています。
つまり、正しい方法で筋トレを行えば、成長をサポートするホルモンを効率的に分泌させ、身長の伸びを助けることに繋がると考えられます。
成長期に避けるべき筋トレとは?正しい方法で怪我を予防しよう
「じゃあ、成長期に筋トレはどんどんやってもいいの?」と考える方もいるかもしれませんが、これは少し違います。
成長期は骨が急激に伸びるため、まだ骨や関節が不安定な状態にあります。
この時期に過度な負荷をかけると、怪我のリスクが高まります。
特に、骨の先端にある骨端線(成長軟骨)に強い圧力がかかると、障害につながる可能性も否定できません。
なので、中学生以下の子どもは、自分の体重を利用した自体重トレーニングをメインに行うようにしましょう。
【おすすめの自体重トレーニング】
- 腕立て伏せ(プッシュアップ)
肩、胸、腕の筋肉を鍛えます。 - スクワット
下半身全体の筋肉をバランスよく鍛えます。 - 腹筋(クランチ)
体幹を強化し、姿勢を良くします。 - 懸垂(チンニング)
背中や腕の筋肉を総合的に鍛えます。
もしダンベルやバーベルを使うウェイトトレーニングを行う場合でも、無理のない範囲で、軽めの負荷から始めましょう。
本格的なウェイトトレーニングは、身長の伸びが落ち着き、骨格が安定する高校生以降から始めるのが理想的です。
結論として、成長期の筋力トレーニングは身長の伸びを妨げるものではありません。
適切な方法で行えば、むしろ健康的な体づくりや成長ホルモンの分泌を促すことにつながります。
バランスの取れた食事、十分な睡眠と組み合わせて、無理のない範囲で運動を続けることが、成長期の体を最大限にサポートする最善の方法です。