近年、「エビデンス」という言葉を耳にする機会が増えたと感じます。
これは「科学的根拠」を意味し、医療分野でよく用いられてきましたが、今ではフィットネスを含め、より広範な分野でその重要性が認識されているかと思います。
「エビデンスはあるの?」とよく聞いてくる人も中にはいますが、正直エビデンスってそんなに大事?と思ってしまいます。
私はエビデンスを過信せずに参考程度にしたほうが良いと考えているので。
もちろん、エビデンスは非常に重要です。
これは間違いありません。
根拠があるに越したことはありませんし、科学に基づいたアプローチは信頼性を高めてくれます。
それでも、私はエビデンスをあくまで「参考程度」にすべきだと考えているのです。
その理由は、人間の身体の複雑性とエビデンス自体の限界にあります。
今現在正しいといされているエビデンスは普通に覆ります。
京都大学本庶佑特別教授は、2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった記者会見で「ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割だ」と語り、科学者が自分の目で確かめることの大切さを説いています。
そもそも世の中で起こっていることはエビデンスで証明されていないことばかりですしね。
エビデンスを過信してはいけない理由
エビデンスは何かを主張する上で不可欠な要素ですが、その活用には注意が必要かと思います。
エビデンスが必ずしも信頼できるとは限りませんし、あるいは誤解を招く可能性もあるからです。
1. 人間の身体の複雑さと再現性の難しさ
そもそも、人間の身体はまだ分かっていないことの多い「ブラックボックス」です。
科学で重要なのは再現性です。
科学的根拠は再現性が求められ、誰がやっても同じ結果が得られないといけません。
しかし、健康やフィットネスに関する事柄は、正直なところ再現性が高いとは言えません。
- 個体差の大きさ
私たちは皆、同じ「人間」という生物でありながら、遺伝子レベルで見れば全員違います。
その差は0.1%とされていますが、その0.1%の差が個人差を生んでいます。
この個人差が、同じアプローチに対しても異なる反応を引き起こす大きな要因となります。
トレーニングでいえば、「同じトレーニング」「同じ食事」「同じ睡眠時間」「同じ生活スタイル」を送っていても必ず結果には個人差が出ます。
「必ず」です。これは断言できます。
この時点で科学的根拠って何?って私は考えてしまいます。
多くの人におそらく効果があるであろうことは分かっても、それがあなた個人にとって効果があるかどうかは実際にやってみないと分かりません。 - 多様な要因の影響
同じ人であっても、体調、ストレスレベル、睡眠、食事、運動習慣、年齢、環境など、さまざまな要因によって身体の反応は常に変化します。
これらをすべてコントロールして厳密に再現することは極めて困難で不可能に近いと思います。
2. エビデンス自体の質と偏り
エビデンスそのものにも、その信頼性を左右する問題点もあります。
- 研究の質のばらつき
すべての研究が同等の信頼性を持つわけではありません。
個人の体験談(ケーススタディ)や専門家の意見は、エビデンスレベルとしては最も弱い部類に入ります。
一方、無作為化比較試験(RCT)や複数の研究結果を統合したメタアナリシスは、より信頼性が高いとされますが、全ての情報が質の高い研究に基づいているわけではありません。 - サンプルの偏り
研究の対象となる人や物の選び方に偏りがあると、その結果は全体を代表しないものになります。
特定の層にしか当てはまらないデータは、一般化できない可能性が高いです。 - 出版バイアス
ポジティブな結果が出た研究は発表されやすい一方で、否定的な結果や「面白くない」結果は発表されにくい傾向があります。
これにより、実際よりもある効果が強調されて見えることがあります。 - 資金提供によるバイアス
研究の資金提供元が、その研究結果に影響を与える可能性も否定できません。
例えば、ある製品を販売する企業がその製品に有利な結果を強調するような研究に資金を提供する場合、結果が偏る恐れがあります。
これらを考えた上でエビデンスをどう捉えますか?
エビデンスとの賢い向き合い方
これらの理由から、エビデンスを見る際には、その情報源、研究デザイン、データの解釈などを総合的に評価することが重要です。
一つのエビデンスだけでなく、複数の情報源や異なる角度からの情報を比較検討することで、より正確な理解に繋がるかと思います。
エビデンスは私たちに有益な情報を与えてくれますが、それを過信せず、常に自身の身体の反応や状況と照らし合わせて判断することが賢明と言えるのではないでしょうか。
特にコロナ以降、私はエビデンスに対してかなり懐疑的になりました。
エビデンスはもちろん重要ですが、参考程度に思っているほうが良いのではないかと思います。
ここまでご覧頂きありがとうございます。