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健康作りに役立つお役立ちコラム Ideal Body Design

標準的なトレーニングプログラムが必ずしも最適とは言えない

ここ15年ほどの間にレジスタンストレーニングの研究は進歩してきました。
一昔では、トレーニングと言うとアスリートが行うもので特にパワー系競技の補強やコンディショニングとして有効とされ、一般の人の健康作りにはよい効果は及ぼさないと考えられていました。
しかし現代では、生活習慣病の予防、高齢者の健康作りなどに有効であると認められ当たり前のように一般の人にも浸透してきました。
レジスタンストレーニングは、健康な身体作りに必要なことであることは事実かと思いますので是非生活に取り入れていくと良いでしょう。
ではどのようなプログラムが良いのでしょうか。



トレーニングの標準的なプログラムは10回×3セットを週2~3回

トレーニングも科学的に行うことが大事と言えます。
トレーニングプログラムには多くの要素が含まれていて、これらをプログラム変数と呼んだりします。
特に重要な変数は、種目(順番も含む)、強度、量、頻度、期間、セット間の休息時間、種目間の休息時間、動作速度、などがあります。
標準プログラムと言う定まった用語があるわけではありませんが、特定の目的を達成する為の最も広く用いられているプログラムと考えてください。
トレーニングの目的は千差万別ではありますが、最も一般的な目的は筋力や筋肥大になるかと思います。
教科書的なトレーニングのプログラムでは、10回×3セットを週に2~3回です。
これを数ヶ月行えば効果を実感できるかと思います。
では、これ以外では効果がないのでしょうか。
これはあくまで基本的は標準プログラムであり、これ以外のやり方でも効果はもちろん期待できす。
効果を考える場合、筋肉の生理学的反応を考えることが大事です。

ダンベルトレーニング

生理学的な視点から負荷強度と効果に関して

運動の負荷によって使われる筋肉の種類は変わります。
筋繊維には、遅筋繊維であるタイプⅠと速筋繊維であるタイプⅡがあります。
タイプⅡ繊維はさらに速度の遅い順にタイプⅡa、Ⅱx、Ⅱbのタイプに分けることができます。
ラットなどでは、この3つのタイプが存在しますが、ⅡaとⅡbがメジャーです。
ヒトではⅡbはほとんど存在していなくⅡaとⅡxがメジャーになります。
トレーニングで肥大するのは主にタイプⅡ繊維で起こり筋委縮も主にタイプⅡ繊維で起こります。
このことから筋肥大させるにはタイプⅡ繊維を使うことが必要となります。
タイプⅡ繊維を使うには、基本的には大きな力を発揮することが必要です。
通常の筋力発揮の場合、まずはサイズの小さい運動単位から動員され、筋力発揮の増大と共に大きな運動単位が動員されていきます。
タイプⅠ繊維から動員されタイプⅡ繊維が動員されていきます。
筋力発揮の増大と共に次第にサイズの大きな運動単位が付加的に動員されることをサイズの原理と言います。
タイプⅡ繊維を動員させるには高負荷の強度が必要になりますが、筋肥大には80%1RMの方が100%1RMよりも効果的です。
これはトレーニング量の違いにあります。
例えば、100%1RMを100kgとすると100(重さ)×1(回数)=100、80%1RMでは挙上回数は8回程度行えるので80(重さ)×8(回数)=640となります。
負荷を8割程度にすることで挙上回数は増えるのでトレーニングの容量も6倍以上になります。
筋肥大させるには、単純にタイプⅡ繊維を動員させれば良いと言うわけではなく、十分に追い込んで疲労させることが重要であると言えます。
100%1RM付近ではわずかに筋疲労が起こっただけになるので主に神経系の調節機能に効果的になり筋肥大はあまり起こりません。
筋肥大を目的にしたトレーニングは、強度以外にもトレーニング量も考える必要があります。
仮に低負荷でもトレーニング量が多ければ筋肥大には効果的となります。

筋肉

標準プログラムは確実に効果が上がると言えるが、最も効果的とは言えない

教科書的な標準プログラムが効果的であると言う疫学的エビデンスは山のようにたくさんあります。
一般高齢者を対象にしたトレーニング効果についても標準的なプログラムが筋肥大と筋力増加に効果があると結論付けられています。
しかし、エビデンスが何に対してのエビデンスなのか注意が必要で、必ずしも最も効果的なプログラムとは言えません。当たり前のことではありますが対象者によっても効果的なプログラムは変わってくるのです。
ですので標準プログラムを比較対象の一つとして別のプログラムの効果を検討することが重要となります。
しかし、そのような研究はまだ少ないのが現状なのです。
標準プログラムは、対象者にとって最適なプログラムとは必ずしも言えないと言うことなのです。
トレーニングを始めるにあたっては標準的なプログラムをまずは考えますが、高齢者の方や基礎疾患持ちの方であればやはりやり方を変えることもあります。
トレーニングは、対象者によって変えていき、内容も経過と共に変更していくことが大事です。

更新日:2021年(令和3年)3月15日